【井熊コラム#12】復活と再生

· 井熊コラム

新年明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

2025年はどのような年になるでしょうか。

今年の干支の蛇は「復活と再生」を意味すると言われます。そのために欠かせないのは何でしょうか。

昨年末、日本の基幹産業である自動車分野で、日産とホンダの経営統合というニュースが話題となりました。背景には中国勢の躍進があります。

中国勢躍進の立役者であるBYDは今年生産台数でテスラを抜いて世界最大のEVメーカーとなるでしょう。しかし、その内容を見るとBYD躍進の最大の原動力はEVではなくPHVであることが分かります。元々蓄電池メーカーであったBYDは蓄電池の可能性も限界も理解していたからこそ、EVとPHVの両面展開を図ったのだと思います。

自動車業界のトップ争いを見ると、トヨタが好調を維持する一方でVWは工場閉鎖を検討する苦境に陥っています。市場ニーズに応じてHVを重視したトヨタとEVブームに翻弄されたVWの差が出たとも言えます。

自動車業界は100年に一度の変革期を迎えていると言われます。電動化で誰でも高性能のパワートレインを供給できるようになったことが最大の理由ですが、私は書籍の中で、「決まったのは電動化という方向であってEV化ではない」と述べてきました。蓄電池の性能や電力システムを考えれば容易に出てくる考えです。BYDの躍進はその指摘が正しかったことを裏付けています。しばらくの間、市場はHVとPHVを軸に動いていくでしょう。

「復活と再生」に欠かせないのは未来のトレンドを先取りすることです。しかし、未来に続く本流の周りには人々を迷走させる様々な流れが渦巻いています。100年に一度と言われる自動車業界の変革を巡る動向は、流言に惑わされず本質を見据えた経営が欠かせないことを示唆しています。

1月20日にアメリカではトランプ大統領が就任し、2025年は波乱の幕開けが予感されます。波乱の幕開けを超え、日本が本当の「復活と再生」の道を歩み始めることを期待します。