【井熊コラム#7】パリオリンピックを観て

· 井熊コラム

パリオリンピックで日本選手は海外開催では過去最高のメダル数を獲得し、大活躍してくれました。勝つにせよ敗れるにせよ、鍛え抜かれたアスリートが限界に挑む姿は見る側に感動と勇気を与えてくれます。

学生時代は勉強そっちのけでボート競技に没頭していました。選手として大きな成績を残すことはできませんでしたが、引退後に取り組んだコーチでは全日本軽量級選手権に優勝し世界選手権に参加させていただきました。国内での成績に自信を持って臨みましたが、世界と日本の差はあまりにも大きく、力及びませんでした。

その時見た世界のトップアスリートの姿は今でも鮮明に記憶に残っています。一般人の常識をはるかに超える「限界」に挑む姿は、研ぎ澄まされた身体と合いまってオーラを放つようでした。世界レベルの競技の現場は、観客席から見るのとは異次元の空気に覆われているのです。

「世の中にはこんなに凄い人達がいるんだ」という感動が身体に沁み込みました。その感覚は後の人生に大きな影響を与えました。彼らが到達した世界に少しでも近づきたいという想いで、スポーツ以外のことにも向き合えるようになれたと思います。

世界大会に出るようなアスリートの多くは、幼少の頃、当時のトップアスリートの姿に憧れたといいます。プロ野球の大谷翔平やボクシング井上尚弥を筆頭に、今の日本には私が若かった頃には考えられなかったパフォーマンスを出すアスリートが何人もいます。彼らに憧れて未来のトップアスリートが懸命に練習を積み重ねているのです。

研鑽を積むのはスポーツの世界だけではありません。私がそうであったように、自らをストイックに鍛える姿と感動的なパフォーマンスは、多くの分野で見る人の目線を引き上げるからです。ビジネスでも、いつの日か、世界のトップレベルのビジネスマンと伍する人材が登場するでしょう。そして、トップアスリートが低迷していた日本のスポーツを世界レベルに引き上げてくれたように、閉塞感のある日本社会に光を与えてくれるに違いないと信じたいのです。