北陸の新技術を世界中の別ニーズと組み合わせていきたい(中尾 政之先生)

アドバイザーインタビュー

· インタビュー

RICHの技術アドバイザーとして事業者の支援をしていただいている中尾 政之先生にお話をお伺いいたしました。

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■現在のポジションとこれまでの経歴について簡単に教えてください。

東京大学を修士修了後、日立金属に就職し、磁気ディスク・ヘッドの生産に従事しました。9年間務めた後、東京大学工学系研究科機械工学専攻助教授に転職し、生産技術・創造設計・失敗学などを対象に、社会連携講座の出資先の企業(コマツ、トヨタ、クボタ、AGC、古河電工、ソニーなど)との共同研究を通して、楽しく研究者生活を送ることができました。
2024年3月に教授で定年退職し、4月からは、東京大学産学協創本部特任研究員と、産業技術総合研究所研究戦略企画部プロジェクトマネージャーとして働き始めました。

 

■得意な支援領域を教えてください。

2024年4月からいくつかの企業の技術顧問にもなりましたが、たとえば、半導体設備用の超精密センサ、レタス生産工場の生産設備、労働災害防止のための知識創発アプリ、化学工場の生産設備、などを対象に口出しをしています。産総研では切削や溶接の生産技術の日本研究拠点の設置を、また、東大ではスタートアップ(起業)の10倍増を目指して働いておりますので、技術ならば何でも興味を示して支援しています。

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■北陸地域の企業や事業者の特性やビジネスの可能性はどのようなところにあると思いますか?

新しい技術は、東京のような都市からだけでなく、北陸を含めて日本国中のどこからでも、創出のチャンスがあると思います。しかしこれまでは日本全体で、事業継承・技術伝承を求めた経営に傾倒し過ぎました。でもつい最近のことですが、たとえば、東大ではスタートアップ希望の若手研究者や学生が急増し、昨年は工学系研究科からでも20社は創業しています。多産多死で将来が見えないとしても、起業に挑戦できる若者が増えているのです。北陸でも、経営者の挑戦意欲が今後の発展を決定すると思います。

 

■北陸地域の企業を支援するとしたらどのようなことをやってみたいですか?

北陸で生まれた新技術を何かの商品の設計・生産に活用できないか、という視点で支援するつもりです。たとえば、上述のレタスの生産でも、分野違いの冷却技術や画像処理技術がキーテクノロジになり得ます。新技術と別ニーズとを組み合わせると、とりあえず想定外の市場が生まれます 。

北陸の多くの新技術を見学したい。そのうえで世界中の別ニーズと組み合わせていきたいです。

 

※このインタビューは2024年5月に実施しました。

中尾 政之

東京大学産学協創本部特任研究員
産業技術総合研究所研究戦略企画部プロジェクトマネージャー

日立金属株式会社に入社し、開発・設計・生産まで幅広く従事。大学では、研究活動に注力。ナノ・マイクロ加工等の研究を手がけ、現在に至る。東京大学の国立大学法人化後に、社会連携講座を15個、立ち上げて、コマツ、トヨタ、AGC、古河電工などの製造業の企業と産学連携の共同研究を進めた。 

2002年に畑村洋太郎氏とともにNPO法人「失敗学会」を立ち上げ、企業の生産活動に伴う事故・失敗の原因を解明する「失敗学」を研究。経済的打撃や人命に関わる重大事故などが起こる前に未然に防ぐ方策を広く社会に提供している。失敗学関連の著書も多数で、日本テレビの「世界一受けたい授業」にも出演し、注目を集めている。

【主な職歴・学歴】
1983年 東京大学大学院工学系研究科産業機械工学専攻修士課程修了
1983年 日立金属株式会社入社
1992年 東京大学大学院工学系研究科産業機械工学専攻助教授
2001年 東京大学工学部附属総合試験所教授
2002年 東京大学大学院工学系研究科総合研究機構教授
2006年 東京大学大学院工学系研究科機械工学専攻教授
2024年 東京大学産学協創本部特任研究員
2024年 産業技術総合研究所研究戦略企画部プロジェクトマネージャー