【井熊コラム#2】次世代に向けた被災地復興のための技術革新とは

· 井熊コラム

 東日本大震災直後、「次世代エネルギーの最終戦略」(東洋経済新報社)という本を刊行し、「需要家主導のエネルギーシステム」を提言しました。再生可能エネルギー、分散電源、エネルギーマネジメントシステムなどの進化を踏まえ、需要家は必要なエネルギーをできるだけ自前で整備し、需要家だけで整備できないエネルギーはコミュニティが補完し、コミュニティで整備できないエネルギーは広域で補完する、という考え方です。

こうすることで、再生可能エネルギーの利用率が高まる、エネルギーの利用効率が高まる、災害時にエネルギーが途絶えるリスクが低減する、広域でのエネルギーの安定性や需給調整力が高まる、人口減少時代に向け地域の事情に合わせたエネルギーシステムを整備することができる、さらに需要サイドでデジタル技術を使ったエネルギービジネスが活性化する、などの効果があるとしました。需要側と供給側が協働することで、良いところだらけの社会システムができるのです。

1995年阪神・淡路大震災、2004年新潟県中越地震、2011年東日本大震災、2016年熊本地震、今般の能登半島地震と、日本では数年に一度の頻度で大震災が発生しています。これらの大震災の他にも震度6クラスの地震は数多く発生しています。さらに最近では気候変動に伴う豪雨災害が頻発しています。

災害が起こると、電力・ガス、上下水道、鉄道、道路などを担う日本の企業、公共団体は頭が下がるほどの献身的な活躍でインフラを復旧してきました。その度に日本のインフラ関連機関の責任感や使命感の強さに感銘しました。

災害の頻度が高まる中で、多くの方が分散型のインフラ整備の必要性を指摘するようになっています。私が「需要家主導のエネルギーシステム」を提言した頃に比べ、再生可能エネルギーやデジタル技術の革新により、分散型システムの効率性や経済性が格段に高くなっていることなどが背景にあるのでしょう。

次世代に向けた被災地の復興のためにも、技術革新を取り込んだ新しい社会基盤の整備が進むことを期待します。